2-始動-





翌日、私はとても疲れていた。

もちろん、何故かは言うまでもないけど。

隣の席の奴を見る。

昨日と同じく、ニコニコ顔で授業を受けていた。

・・・本当にこいつとは、一昨日初めて会ったのか?

「はあ・・・」

しかもなんか事件に巻き込まれてるし。

こいつが探偵だったり。

この二ヶ月間、あまり何も考えないで過ごしてきた。

つまらない毎日。

騒がしい日々。

それでいいと思っていたのに・・・

そう、自分のことなんかどうでもいいと思っていたのに。

そっと首にかけてあるネックレスに触れた。

四葉のクローバーの形をした、小さな鍵。

私の過去は・・・

感慨にふけっていると、

「こらぁ、神崎。なにやってんだ」

うっ、教師に叱られてしまった。

最悪。

「・・・すみません」

一応謝っておく。

「じゃあ、この問題といてみろ」

この英語教師、二ヶ月の間に学習すればいいのに。

そんなこと、私には通用しない。

ぐだぐだ言っても仕方がないので、

「・・・はい」

黒板の前に行き、問題を解いた。

解答時間約二十秒。

超簡単だ。

まったく。

このような問題で、私をおとしいれれるとでも思ってんだか。

「できました」

すたすたと自分の席に戻った。

英語教師、唖然としている。

いつもの事だろ。

と、横を見てみると、榊と目が合った。

小声で話しかけてくる。

「神崎って、勉強できるんだな。さっすがー」

なんかむかつく。

「あんたに言われたくない」

昨日榊も同じようなことしてたじゃん。

「まーいーじゃん。あっそう、星野美由紀について、分かったことがある」

「ホント?」

伊達に探偵やってないな。

まあ、内容によるけど。

「本当だって。詳しくは放課後なっ」

榊はにっと笑って、前を向いた。

・・・ホントたった一日でこんなになれなれしいんだから。

まあ、たまには授業に集中してみようかな。

ノートと教科書に視線を落とした。



放課後がやってきた。

「さて・・・」

今日はどうなるのだろう。

さすがに今日も係会があるってことはないだろう。

だどしたら・・・

まあいい。

帰る用意はもう出来ている。

鞄を肩にかける。

そして隣の席の奴の声をかける。

「ちょっと早く行かないと見に危険が生じるから先に行くね」

榊は不思議そうな顔で、私を見た。

「何でだよ。俺だってもう用意できてるのに」

もっともな意見だが、今の私には関係ない。

はぁ、と息をつく。

そして、榊に理由を言おうとした。

「あのね・・・」

すると、後ろから声がした。

・・・時間切れだ。

「あっやや〜ん♪一緒にいこぉぜぃ」

そうか。

来ちゃったのか。

いつもいつも早いなぁ。

もうちょっと遅くていいのになぁ。

・・・しょうがない。

指を後ろのほうに指した。

もちろんそこにいるのは・・・葵だ。

「こういうこと」

榊は分かったのか分かってないのか分からないが、「あっそう」と言った。

なんか複雑そうな顔をしている。

葵はようやく榊を認識したらしく、「およっ?」と変な声を出した。

そしていきなり、「アーっ、アヤヤンなんでこいつと同じクラスでしかも隣の席で話してるわけ?」とわけの分からないことを言い出した。

「知るか」

まったく。

こいつは子供か。

何だか気まずい雰囲気が流れる。

クラスの人(主に女子)は、葵にこそ慣れているが、プラス榊なので、妙にそわそわしている。

・・・全員どっか行きやがれ。

「・・・先行くからちょっとのいて」

葵を振り払って行こうとすると、両腕を二本の手(二人分)につかまれてしまった。

「アヤヤン」

「神崎」

なんか二人してこっちを睨んでくる。

「うっ・・・」

なんか二人とも怖いんすけど。

しかも妙に笑ってるし。

冗談抜きでやめてくれ。

てか、ホント私たち浮いてるし。

こうなったらしょうがない。

「・・・じゃあ、二人まとめてついてきやがれ」

すると二人とも、突然明るくなり、

「じゃあ、いこーぜ」

「まあ、ちょっと心に引っかかるものもあるけど、とっとと行こう」

私の腕をつかんだまま、歩き出した。

「ちょっとその前に離してってば」

抗議をしようとしたが、聞き入れてくれず、

「昨日はいろいろごたごたがあってあまり話せなかったけど、よろしくな」

「俺こそ」

二人で仲良く話しているようにも見えるが、二人の間に火花が散っている。

「ちょっと、やめ」

私の叫びも空しく、あっという間に教室の外に引きずり出された。

やっぱり榊を無視して走って逃げればよかったなと、かなり後悔。

まだ笑顔で睨み合っている。

片方は黒い髪に青い瞳。

もう片方は金髪に黒い瞳。

変な組み合わせで、この二人、かなり怖いぞ。

早足で音楽室に向かっているようだが・・・

私の腕をつかむ力がさらに強くなる。

この状況はちょっと・・・

苦しい。

それに恥ずい。

ホントにやめてくれ。

そういえば、いつの間にか二人とも両手でつかんでいるような・・・

「誰か助けてぇ〜」

私の叫び声が、廊下にこだましていた。