「・・・で?」
皆、話そうとしない。
まったく。
警部さんも、困っているようだ。
しっかりしろ。
仕方が無いから、司会役を買って出る。
「じゃあ由奈、美由紀さんのことについて、詳しく教えてくれる?」
とりあえず、由奈に話を振る。
っていうか、もともと警部さんは、由奈に話を聞きに来たんだ。
何でこう、バシッと訊かないんだろう。
ちょっと考える。
そして
「あ・・・」
皆が話そうとしない理由が分かった。
何で気づかなかったんだろ。
ほんと無神経だな、私。
由奈はまだ子供なんだ。
「ごめん。ちょっと焦っちゃった」
親戚が死んだんだよね。
それに、そのおばさん、由奈嫌いらしいし・・・。
それでも
「だいじょうぶ。話すから」
由奈はそっぽ向いたまま、話し出した。
「星野美由紀。私のお母さんの妹。ほんとに最低な奴だった。金ばっか興味があって、それなのにお母さんに何もかもさせていた。まあ、財閥の社長の娘なんだから、そうなっても仕方が無いのかもしれないけど。・・・お母さんを死なせたのはアイツなんだ」
いきなりきついことを言いだした。
「どういう意味かい?」
水無月警部が代表で聞いた。
「それは・・・」
一回言葉が途切れる。
しかしすぐにまた、話し始める。
「アイツが・・・お母さんをいじめていたから」
「えっ」
声を上げたのは南だった。
繊細な子だから、自分以外の人の心が分かるんだ。
そう、由奈は本当に苦しそうな顔をしていた。
それでも、一言一言をかみ締めて言う。
「私、ずっと見てたんだ。アイツ、秘書の仕事、ほとんどお母さんに押し付けて、楽しようとして・・・。お母さん、とってもつらそうな顔をしていた・・・。言うこときかなかったら、殴って・・・。だから・・・自殺しちゃったんだよっ」
大きな瞳から涙がこぼれる。
もう言わなくていい。
言おうとしたけど、いえなかった。
「とにかく、アイツは殺されて当然。会社の人も気づいてたんだよ。猫かぶってたけど、お母さん以外の人にもいろいろ押し付けてたし。ばれたんだよ、本性が」
今度こそ言おうとした。
しかし
「もういいいよ」
と、由奈の発言を止めたのは、意外にも、榊だった。
由奈は顔を上げた。
榊は足を再び組んで、冷たいのか冷たくないのかよく分からないけど、鋭い目線で由奈を見ていた。
「これ以上は言わなくていい。大事なのは――どうやって殺されたか。それだけ」
止めたのはいいけど、とってもきつい一言だ。
そして水無月警部に向かって言う。
「水無月さん。此処に来たのは、美由紀さんが、普通ではありえない殺され方をしていたからではないのですか?」
どういう意味か、分からなかった。
榊じゃないみたいだ。
もっとも、たったの一日で榊のことが分かったわけじゃないけど。
そして、警部が余計に混乱させる言葉を言った。
「・・・いやぁ、参ったよ。君を探してよかった。優秀な探偵くん」
「は?」
どういう意味だ?
皆口が開いている。
「なあ、どういう意味なんだ?」
今度は葵が皆の代表。
「それはね・・・」
水無月警部が言おうとしたが
「あぁ、そんぐらい自分で言いますよ」
と、榊が制して言った。
言ってしまった。
「榊翔太。親がやってる榊探偵社で探偵してます。水無月さんとは結構前からの付き合いなんだ」
・・・信じられない。
っそして私に向かってとどめの一言。
「ね、言っただろ。将来の夢は名探偵だって」
「な・・・」
しばらく絶句。
すると南が榊に訊ねた。
「でもさっき、水無月さんのことで驚いてなかったですか?」
「あぁ、ただ単に、此処で会うなんて考えてなかったからだよ」
それにと、付け加える。
「なんか驚いたほうがおもしろいじゃん」
と、にぃ、と笑った。
「このぉ〜」
怒りがわいてくる。
「馬鹿榊ぃ」
「おい、落ち着けって」
もう、喧嘩だ喧嘩。
馬鹿にしやがって。
榊につかみかかる。
しばらくやりあっていると、
「あはっ」
笑い声がした。
その声のほうを見る。
由奈が笑っていた。
さっきまでの憎しみの表情が消えていた。
皆笑っている。
榊と顔を合わせた。
「ふっ」
つかみかかるのをやめて、言った。
「まあ、よかった」
「だな」
榊が笑った。
私はとりあえず顔をそらして、
「とりあえず一時休戦ってことで」
私はまっすぐと水無月警部を見つめた。
そして傍によって行って耳元で言う。
「由奈のいないところで、詳しく聞かせてくれますか?」
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