「由奈ちゃん、おばさんが・・・亡くなったんだって」

由奈は、その言葉を聞いても、あまり反応が無かった。

それどころか、相変わらずニコニコしている。

他の三人は唖然としている。

もちろん私もだけど。

目を見開いて、西田先生と、由奈を交互に見て、あっ、とか、おっ、とか、手に持っている楽器を落としそうになっていた。

榊は少し驚いた後、手に持っていたヴァイオリンを、ゆっくりと床に下ろし、ケースにしまっていた。

「なんだよ・・・それ」

葵がつぶやいた。

声色が暗い。

そりゃだれでも、人が死んだって聞かされたら、そうなるだろう。

だけど、由奈は違った。

一番落ち込んだり、気にするはずなのに。

「そうなんだ」

表情と同じく、、明るい声だった。

なぜだろう。

普通なら親類をなくすと、驚いたり、悲しんだりするのに。

そう、一般常識では。

でも、人のことも言えない。

私もその気持ちが分からないから。

だけど、由奈の気持ちも分からない。

私は西田先生に訊いてみる。

「その・・・おばさんって?」

恐る恐る。

西田先生は、丁寧に説明してくれた。

榊は目を閉じて、足を組んで聞いている。

葵や南は、下を向いている。

「えっとね、由奈ちゃんのお母さんの・・・亡くなったお母さんの妹さんなの。お父さんの・・・星野財閥に勤めていて、お父さんの秘書をやっていたそうなの。星野美由紀っていうんだって」

驚いた。

その、おばさんのことじゃなくて、由奈のお母さんのこと。

亡くなっていたなんて。

でも、姉妹そろって死ぬのはどうなんだ?

不謹慎ながら、質問をした。

葵や南はともかく、由奈はそれほど気に留めてないみたいだからいいだろう。

「その・・・死因は何なんですか?」

「それが・・・」

西田先生は困った顔をして、口をつぐんだ。

やっぱり不謹慎だったか。

そのとき、

「あのー」

間抜けな声がした。

と言うよりも、空気が読めてない声。

その声の持主は、黒髪の、長い足を組んで目を閉じている榊だった。

その目が開き、青い瞳が現れる。

「もちろん、他殺ですよね」

驚いた。

やっと口を開いたかと思うと、いきなり他殺とか。

こいつこそ、不謹慎だろ。

こら、と言おうとした。

由奈が目の前に居るのに。

しかし、その一言を言おうとしたとき、由奈が口を開いた。

みんなが驚く一言を。

「そうに決まってるじゃん」

その場の空気が凍った。

その声は、先ほどと同じく、明るい声だった。

しかし、どこか冷酷な感じがした。

「あの」

南が何か言おうとした。

だが、また由奈の発言により、制されてしまった。

残酷な、その言葉に。

「あんな最低な女、殺されて当然なんだよ」

あどけなさが残る、小学生が言っているようには見えなかった。

冷たい、恨みがこもっているような言葉。

榊は、その由奈を青い瞳で凝視していた。

と、突然ガーンと、大きな音がした。

「はい?」

「は?」

「何よ?」

「え?」

「ん?」

皆が音のした方向に注目した。

自然と凍った雰囲気が崩れる。

音は、ドアのほうからした。

よく見ると、ドアの横に、人の頭が見えている。

倒れているようだ。

南と西田先生がそろって

「キャー」

叫んでいる。

たかが人の頭ぐらいで。

葵と榊は、興味津々な様子で、

「おお、すげー」

「何でこんなコケ方するんだ?」

と、そばによっていって、その男らしい人物をつついている。

由奈は突っ立っている。

まったく。

はぁー、と息を吐きながら、ずんずんとその男の所に行き、声をかける。

「ちょっとそこの人、とっとと起きて」

私の大声で、気がついたようだ。

むくっと起き上がる。

葵と榊がよける。

「あれ、ここは?」

「ここはじゃない。四葉学園高等部。第二音楽室」

ああそうだ、と。

やっと目が覚めたようだ。

「お嬢ちゃんは誰だい?」

いきなり訊いてきた。

私は訊き返す。

「あなたこそ誰です?私はここの生徒ですけど」

そうかい、と言い、自己紹介をしてくれた。

「私は、水無月と言う、ただの警部だよ」

意外だった。

みんな、えーっ、といっている。

私も言った。

「こらこら。・・・まったく。私はただ、星野美由紀のことについて、星野由奈さんに訊きに来ただけだよ」

それは全くだ。

って

「えーっ」

それこそ、校舎全体に響き渡ったかもしれないくらい大きな声を出していた。

警察が来るなんて・・・

しかも由奈に用があって?

まあ、確かにおばさんが死んだから、そうかもしれないけど・・・

もう、いったい何なんだーっ!