次の日―
昨日は眠れなかった。
もちろん機嫌は悪いわけで、いい天気だということや、クラスの皆が、いつもよりもざわついていることなんか、気にとめもしなかった。
でも、何か予感がする。
昨日のあれに続く、何かが起こるということの。
席について、鞄の中から勉強道具を取り出した。
ちゃんと宿題をしているところが、我ながらえらい。
さすがに予習はしなかったけど。
それに、しなくてもわかるし。
誰かと話すわけでもなく、ボーっとしていると、なぜか葵がやってきた。
それに、なんだかそわそわしているような。
「あのぉ、綾さん?」
「なに?」
思いっきりふくれっつらで答える。
「いやぁ、何で昨日部活に来なかったのかなって・・・いあぁ、やっぱり俺のせいだよな、うん・・・。俺、なんかした?」
べしっと、葵の頭をたたく。
「いったぁ」
「別にそんなこと気にしないでよ。それに、葵は関係ないし・・・」
そう、葵は全然関係ない。
「ほんとに俺してない?・・・でも綾にしては珍しいよな。そんな風に参ってるの」
「じゃあ私はいつもどんな感じなのよ」
「怒ってて、すぐ怒鳴るし、怖いし・・・かわいいし・・・」
「それほめてんの?」
どう聞いても、最後の以外、悪口にしか聞こえない。
まあ、確かにそうだけど。
いつも葵のこと、蹴飛ばすか、殴るか、怒鳴るしかしてないきがするし。
「ほめてるに決まってるだろ。・・・なんていうか、いつもよりもまして、こう、黒のオーラが漂っているような・・・だからもっと前向きに行こうぜ。何があったか知らないけど」
「・・・ういいから」
「え?」
「もういいから、とっとと教室に帰りなよ」
トン、と背中を押す。
「ちょっと一人でいたい気分なんだよね」
「そっか・・・ごめんな」
じゃあな、と言って、葵は去っていった。
なんか、ちょっと後味が悪い。
あいつにしては、心配してくれてたのに、悪かったかな。
余計に憂鬱な気分になった。
昨日のこと、思い出す。
黒い髪に蒼の瞳。
また再びボーっとする。
めぐる気持ち、昨日の記憶・・・
キーンコンカーンコーン
予鈴がなる。
「おーい、席に着けよーって、なんかいつもと空気が違うなぁ。何かあったのか?」
と、空気の読めない担任教師(49)が入ってきた。
窓の外を見る。
深緑の木々が、風で揺れている。
さらさら
きらきら
「・・・だから、よく聞いとけよ」
どうやら、話を聞いていなかったみたいだ。
でも別に聞くようなことでもないだろうし。
外を見続けていると、担任の一言が耳に入った。
「・・・転校生の、榊翔太君だ。よろしくしてやってくれよ。特に女子」
なんだ、朝っぱらからうるさいと思っていたら、このことを話していたんだ。
一人で納得。
ふと、前を見てみた。
「え・・・」
黒板にさらさらと名前を書き、自己紹介をする、
「榊翔太です。よろしくお願いします」
真っ黒い髪、蒼い瞳。
それはまぎれもなく
昨日の少年だった。
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