とりあえず、西田先生に提案して、今日はお開きになることに決まった。
私と、榊と、水無月警部を除いて。
由奈は南が送ってくれるそうだ。
そう、由奈も寮に入っていた。
葵は・・・ほっといても自分で帰れるだろう。
「じゃあね」
「また明日」
「ばいばい」
などと挨拶をして、皆、帰って行った。
西田先生は、用があるらしく、鍵を渡しておいて、どこかに行ってしまった。
こういう話、苦手な人だからな。
「さて、と」
ようやく話が出来るようになった。
「じゃあ、水無月さん、詳しいことをどうぞ」
榊はそれらしい手帳を取り出している。
本当に探偵っぽい感じがする。
信じられないけど。
水無月警部が話し出した。
「星野美由紀。三十七歳。死因は、青酸カリを飲んだことによる中毒死。自分の部屋の、机の横に倒れていたらしい。部屋には・・・内側から鍵がかかっていた」
まてよ、それなら
「自殺じゃないんですか?」
そうだ。
普通に考えて、そうとしかありえないだろう。
刺殺や絞殺ならともかく、毒だし。
しかし、警部が否定した。
「確かに、自殺の可能性も高い。まあ、遺書のようなものも、机の上にあった。それはパソコンでかかれたものだあら、信憑性があまり無いのだけど。それに、彼女の遺体のそばに、このような紙が落ちていたんだ。そばといっても、机の下なんだが」
その紙を見せてもらう。
もちろんコピーだ。
「なに、これ・・・」
絶句する。
上から榊が覗き込んできた。
「どれどれ・・・これは・・・」
その紙には、猟奇的な言葉がいくつも書かれていた。
『許さない
貴女のしたことを
だから貴女を殺してあげる
どのような死に方が好きかしら
心臓を抉り出す?
首を切り落とす?
海の底に沈む?
私は優しいから、一番簡単な方法で殺してあげるわ
死にたく無ければ
私のところに来なさい
気が向いたら許してあげる
気が向いたらね』
「犯行予告みたいだな」
榊がつぶやいた。
何か気になる。
あっそうだ。
「あの、その遺書みたいなのも、見せてもらいますか?」
遺書があるんなら、それも見とかないと。
「はい」
水無月警部から渡された、遺書を見てみる。
『私は今までいけないことや、悪いことをたくさんしてきた。
だからこの身を持って償う
星野美由紀』
「・・・これって遺書とはいえないんじゃないんでしょうか」
「確かに。短いし、具体的なことを書いていないし・・・」
「まあ、そうなんだよ。この遺書よりも、さっきの犯行予告分みたいなののほうが、信憑性も高いだろう」
なぜ、同じ部屋の中に、遺書と犯行予告文の二枚が同時にあったのだろう。
予告分なんか落ちてたら、殺人って分かるし。
「毒っていうのは、自殺とも、他殺とも、見分けがつきにくいんだよね。だからいつも鬱陶しい。知らない間にコップの水に入れられていて、それを飲むと簡単に死ぬ。アリバイなんて、ほとんど意味がないし。もっとも、青酸カリは、酸化すると一部が炭酸カリになるため、長時間の放置は出来ないのだけど」
榊が一通り話し終えると、突然荷物をまとめ始めた。
「どうしたのよ急に」
「ちょっと調べたいことがあって」
じゃあ、と走って去っていった。
まったく。
「神崎さん、だったよね」
水無月警部が話しかけてきた。
「そう、ですけど」
「私と会ったことあるかな」
いきなりな質問だ。
正直に答える。
「私、春までの記憶がないんです。不思議と勉強とか、そういうのは覚えてるんですけど・・・」
「そうか・・・まあ、気にしないでくれ」
私もそろそろお暇するよ、と警部も帰っていった。
一人音楽室に取り残される。
「はぁ・・・」
今日一日でため息を何回ついただろう。
榊翔太
星野由奈
水無月警部
星野美由紀殺人事件
「何でかな・・・」
一日のうちに、いろいろなことが起きすぎた。
あいつ・・・
榊とは、あまり初めてあった気がしなかったのはなぜだろう。
また、昨日の波が押し寄せてくる。
寮に帰ろう、と思った。
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